日本環境教育学会関西支部第12回研究大会報告

 平成14年12月に環境省中央環境審議会から「環境保全の活性化方策について(中間答申)」が出され、平成15年7月に「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」が制定(10月1日施行)されました。これによって、教育、行政、NGO/NPOs、研究機関、企業等のパートナーシップの推進、そしてさらなる環境教育の躍進のため、理論と実践を相補する基本方針の検討とその成果が期待されます。
 国内では、教育基本法の見直しが検討され文部科学省の中教審から「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について(中間報告)」が出されました。これに対する疑問点や問題点を指摘した「教育基本法の見直しに対する要望」が教育関連学会から提出されました。
 また世界に目を向けると、2002年8月26日から9月4日まで開かれた持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルク・サミット)で日本から提案された「持続可能な開発のための教育の10年」が国連総会で採択され、2005年から世界的なキャンペーン活動が展開されることになりました。
 今大会では、これら国内外の動きを受けて、「琵琶湖から学ぶ持続可能な環境教育−環境保全のための意欲増進と環境教育の推進のために−」の全体テーマの下、「地域性」、「生命(いのち)の教育」、「文化・伝統」、そして「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」をキーワードに、琵琶湖を生活圏とされている方々の「生の声」を聞き、環境保全と環境教育のこれまでの成果と今後に向けての課題について議論しました。午前中は一般研究発表、午後からはサテライト・シンポジウム「持続可能な開発のための教育の10年」や、新たな試みとして若手研究者による「環境教育と野外教育の接点」やシンポジウム「琵琶湖をめぐる環境活動−環境保全と環境教育の発展−」を開催しました。
 

○日 時:2003年12月6日(土)

 


○会 場:びわこ成蹊スポーツ大学
        所在地:〒520-0503 滋賀県滋賀郡志賀町北比良尾所1204
            TEL.077-596-8410(代)
経 路:JR大阪駅→[新快速/約30分]→JR京都駅
     →[湖西線/約40分]→JR比良駅
ホームページ:http://www.osaka-seikei.ac.jp/biwako-daigaku/

○研究大会テーマ:「琵琶湖から学ぶ持続可能な環境教育−環境保全の
                ための意欲増進と環境教育の推進のために−」
○後 援:びわこ成蹊スポーツ大学
○参加費:会員1,000円・非会員1,500円(要旨集代込)、学生無料(要旨集代別)
○要旨集:1冊500円
○懇親会費:会員・非会員3,000円、学生2,000円(要予約)

プログラム

 

 9:30   受付開始

10:00   一般研究発表(3会場) 発表時間15分/1件
        A会場(講義棟301)テーマ「思想・アプローチ・環境倫理」
        B会場(講義棟204)テーマ「総合的学習・カリキュラム・教材」
        C会場(講義棟104)テーマ「持続可能性・循環型社会・技術」

12:15   昼食

12:50   サテライト・シンポジウム

        A会場(講義棟301)「環境教育と野外教育の接点」
         コーディネーター:中野友博氏(びわこ成蹊スポーツ大学)、岡村泰斗氏
         (奈良教育大学)、天野雅夫氏(甲南病院看護専門学校)

        B会場(講義棟204)「『国連持続可能な開発のための教育の10年』を考える」
         コーディネーター:森家章雄氏、福島 古氏(「国連持続可能な開発のための教
         育の10年」を考えるネットワーク)

13:50   休憩

14:00   全大会開会(講義棟302)

        びわこ成蹊スポーツ大学学長 森 昭三氏挨拶

    日本環境教育学会関西支部長 谷口文章氏挨拶

     

14:10   特別講演 金森雅夫氏(びわこ成蹊スポーツ大学)「スポーツと環境教育−心とからだの健康から−」

15:00   休憩

15:10   基調報告 村上宣雄氏(滋賀県生物環境アドバイザー、全国学校ビオトープ・ネットワーク副会長)

         「琵琶湖と生命(いのち)の健康」

15:40   休憩

15:45   シンポジウム「琵琶湖をめぐる環境活動−環境保全と環境教育の展開−」

         コーディネーター:谷口文章氏(甲南大学)
         コメンテーター:山田卓三氏(名古屋芸術大学)
         シンポジスト:
         「びわ湖フローティング・スクール『湖の子(うみのこ)』の歴史と評価」
          栗田一路氏・山田浩治氏(滋賀県立びわ湖フローティングスクール指導主事)
         「菜の花プロジェクトの目差すものとその成果」
          山田 実氏(菜の花プロジェクトネットワーク事務局長)
         「琵琶湖の伝統漁法と琵琶湖の現状」
          戸田直弘氏(滋賀県漁連青年会元会長、全国漁協青年会理事)
         「不耕起栽培の米づくり」
          中村治一氏(田んぼの学校、メダカの学校小田分校)

     

17:35   閉会挨拶

        実行委員長 中野友博氏(びわこ成蹊スポーツ大学)

17:45   懇親会 びわこ成蹊スポーツ大学 クラブハウス食堂

19:30   終了

※受付開始など一部プログラムの時間が変更になっておりますのでご注意ください。
※大学敷地内は全面禁煙です。建物外でもタバコは吸えませんのでご協力お願いいたします。
※昼食はクラブハウス内レストランが営業しています。
※マイカップをご持参ください(コーヒー、お茶のサービスがあります)。

 

サテライトシンポジウム

A会場(C301)「環境教育と野外教育の接点」

 コーディネーター:中野友博氏(びわこ成蹊スポーツ大学)、岡村泰斗氏(奈良教育大学)、天野雅夫氏(甲南病院看護専門学校)

 環境教育として様々な活動が行われていますが、自然の中での直接体験を重要視しした活動は自然に対して興味関心を持つきっかけとして必要な活動でもあります。一方で、教育目標を持って行われる自然の中での直接体験活動を野外教育と呼んでいます。
 環境教育と野外教育、いずれも行われる場所や活動、内容が非常に似ているのも事実です。しかし、野外教育であつかうけれども環境教育であつかわない、逆に環境教育であつかうけれども野外教育であつかわないものなど明らかに異なっている部分もあります。また、同じ活動でも目的が異なっていることもあります。では、環境教育と野外教育とどちらの範囲が大きいのでしょうか。こんな素朴な疑問を持ち寄ってみることにしました。どちらも学会組織まである概念です。お互いに理解し合うことで双方の発展につながればと考えています。

【野外教育とは】
 野外教育とは「自然の中で組織的、計画的に、一定の教育目標を持って行われる自然体験活動の総称」であり、自然体験活動を取り扱う教育領域である。この自然体験活動とは、「自然の中で、自然を活用して行われる各種活動であり、具体的にはキャンプ、ハイキング、スキー、カヌーといった野外活動、動植物や星の観察といった自然・環境学習活動、自然物を使った工作や自然の中での音楽会といった文化・芸術活動などを含んだ総合的な活動」である。(青少年の野外教育の振興に関する調査研究協力者会議・報告『青少年の野外教育の充実について』1996年)

【環境教育とは】
 環境教育とは、「環境や環境問題に関心・知識をもち、人間活動と環境との関わりについての総合的な理解と認識の上にたって、環境の保全に配慮した望ましい働きかけのできる技能や思考力、判断力を身に付け、より良い環境の創造活動に主体的に参加し、環境への責任ある行動がとれる態度を育成する」ための教育領域である。(文部省『環境教育指導資料』1991年)

 

B会場(C204)「『国連持続可能な開発のための教育の10年』を考える」

 コーディネーター:森家章雄氏、福島 古氏(「ESDの10年」を考えるネットワーク)

 2005年1月から10年間にわたって実施されることになった「国連持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」(DESD)は、今春の日本環境教育学会全国大会のシンポジウムや7月の関西支部ワークショップのテーマにも採り上げられるなど、環境教育への今後の関わりが注目されています。来たる関西支部大会においてもサテライト・シンポジウムの企画にDESDが採り上げられることになりました。私たちは関西地区を中心に『「国連持続可能な開発のための教育の10年」を考えるネットワーク』(略称「教育10年ネット」)を立ち上げており、その関係でサテライト・シンポジウムのコーディネーターを務めます。そこでは、基調報告としてDESDをめぐる最近の動向をまとめて概観し、併せて今後の展望と課題について参加者と共に議論を深めたく思います。本紙を読まれている皆様が、この機会に多数参加されることを願っています。

 

一般研究発表プログラム

分科会A  テーマ「思想・アプローチ・環境倫理」(座長:赤尾整志、木内 功、戸田耿介)

10:00〜10:15    岡田泰典(甲南大学大学院)・谷口文章(甲南大学)
                 「環境教育における規範性の問題−環境保全の活性化方策中間答申をめぐって−」

10:15〜10:30    来見誠二(今津町立今津中学校)「エコスクールの取り組みと成果」

10:30〜10:45    田口敬志(甲南大学研究生)・谷口文章(甲南大学)「デューイ教育思想における環境教育」

10:45〜11:00    高原哲史(神戸親和女子大学大学院)「環境教育におけるホリスティック・アプローチについて」

11:00〜11:15    松田拓也(甲南大学大学院)・谷口文章(甲南大学)
                 「自然人と環境教育−ルソーの『エミール』と『人間不平等起源論』をめぐって−」

11:15〜11:30    山田弘司(大阪市立生涯学習センター)「宗教思想(仏教心理論)から観る環境教育のアプローチ」

11:30〜11:45    森 幸一(滋賀県総合教育センター)
                 「環境に対する認識及び心象の形成と評価に関する研究ー身近な生き物に関する学習を通してー」

11:45〜12:00    米山絵里・荒木恵理・中川もも(奈良教育大学大学院)・岡村泰斗(奈良教育大学)
                 「野外教育指導者養成カリキュラムにおける環境倫理観の育成」

12:00〜12:15    渡辺理和(甲南大学研究生)・谷口文章(甲南大学)「環境倫理の基本原則と環境教育への具体化の課題」


分科会B
 テーマ「総合的学習・カリキュラム・教材」(座長:中野友博、本庄 眞、植田善太郎)

10:00〜10:15    桔梗佑子(甲南大学大学院)・谷口文章(甲南大学)「環境教育を通じた人格の形成」

10:15〜10:30    大久保その子(京都自然教室)「学校における生物教材の活用−飼育小屋の動物から学ぶ環境教育の可能性−」

10:30〜10:45    新井秀和・重藤英一(大阪府門真市立第二中学校)
                 「『地域の環境』を素材にした総合学習におけるクロスカリキュラムの試み」

10:45〜11:00    小山真輔(兵庫教育大学大学院)「総合的学習の時間と環境教育−カリキュラム構成の視点から−」

11:00〜11:15    清水千絵(京都精華大学環境社会学科)「鶏の屠体プログラムから学ぶ−「差別」と「生命の尊厳」に関わる問題−」

11:15〜11:30    清水 実(兵庫教育大学)「環境教育を取り入れた『総合的な学習の時間』構築の実践研究」

11:30〜11:45    田先崇志(兵庫県立西脇高等学校)「身近な素材で環境教育を」

11:45〜12:00    中川もも・米山絵里・荒木恵理(奈良教育大学大学院)・岡村泰斗(奈良教育大学)
                 「河川を活かした冒険・環境教育プログラムの効果−参加者の水に対する態度・イメージに着目して−」


分科会C
 テーマ「持続可能性・循環型社会・技術」(座長:塩川哲雄、岡村悦治、岩本 泰)

10:00〜10:15    天野雅夫(甲南病院看護専門学校)・水山光春(京都教育大学)「廃棄物環境教育再考−環境経済学をてがかりに−」

10:15〜10:30    水谷裕之(大津市立日吉中学校)「酸性雨と安曇川の水質の関係ー地域教材の開発の基礎資料についてー」

10:30〜10:45    本庄 眞(香芝市立真美ヶ丘小学校)「指標生物としてのサホコカゲロウ」

10:45〜11:00    山田弘司(大阪市立生涯学習センター)「簡易計測器具を使って水の汚れを調べる−実例報告−」

11:00〜11:15    新田和宏(持続可能な開発のための教育の10年推進会議/地球市民教育総合研究所)
                 「ESD戦略−「持続可能な開発のための教育」とは何か−

11:15〜11:30    岩本 泰(東京学芸大学大学院)・小澤紀美子(東京学芸大学)
                 「持続可能な社会創造をめざす環境教育の研究−『市民(性)教育』による視点から−」

11:30〜11:45    桝井靖之(関西学院大学院博士課程)「自然への支配的態度から畏敬的態度〜ハイデッガーの技術論にそくして〜 」

11:45〜12:00    菅 留視子・伊集院 梓(西野田電工梶j・岡村悦治(グローバル環境文化研究所)
                 「次世代太陽光発電教材『花力発電』の開発〜産学連携による開発の視点から〜」

  パ ネ ル 展 示

藤井孝明・甲南大学谷口研究室(甲南大学)「甲南大学における循環型コミュニティーの創造
                  −環境教育の実践を通して−自給自足の生活−循環型社会の原型の体験−」

上田藤市朗(ルンルン代表)「志賀町の楽しい休日プログラム「ルンルン」の活動−環境学習を含めて−」

赤尾整志(あいな里山ビオパーク)「国営明石海峡公園(神戸地区)における自然学習・環境教育の取り組み」