自然体験活動リーダー養成講習会の報告
(共催 とき:2000/8/23〜26 ところ:大阪府立総合青少年野外活動センター)
今回、財団法人大阪府青少年活動財団(日本環境教育学会関西支部共催)によって大阪府立総合青少年野外活動センターで「自然体験活動リーダー養成(初級)」が行われた。このカリキュラムは、自然体験活動の全国的な拡がりを目指して90の各種団体が集まって設立された自然体験活動推進協議会(CONE)の定める主旨に基づいたプログラムである。その目的は、自然体験活動についての基礎的な知識と方法を理解し、小規模人数(10人程度)を対象とした、日帰りで身近な自然を案内できる自然体験活動を企画し、実施できる者を養成することであり、12項目から成る目標は、野外活動だけにとどまらず、自然についての知識や文化の理解さらに、安全対策の知識やプログラムの企画、立案、実施の手法を知り活用できるようになることを目指している。講義内容は、理論編と実習編に分かれ、前者は研修室で、後者は能勢の豊かな自然のなかでおこなわれた。ここでは、3泊4日にわたる養成講習の内容を報告したい。 |
●初日 8月23日の午前10時に参加者は、野外活動センター本館に集まった。さっそく開講式でセンター長の挨拶があり、養成講習の主旨、そして自然体験活動憲章が説明された(「自然体験活動の理念」)。ここでは、この自然体験活動の特色である「自然活動体験全般に関わることのできるリーダーの養成」ということがいわれた。昼食後に行われたのは、参加者がお互いを知るための「アイスブレーキング」の実習および説明であった。参加者は大阪レクリエーション協会の堅本氏の指導によってアイスブレーキングのいくつかの例を実際に体験し、その必要性や効果を説明していただいた。そして「自然体験学習の基礎技術(1)野外料理」では、日本ボーイスカウト大阪連盟の平井氏に、実際の夕食の調理を通して野外料理における注意点や安全管理などについて説明していただいた。自分たちで作った夕食を楽しんだあと、大阪自然環境保全協会の木下氏から「人と自然、社会、文化の関わり(里山の生態について)」が講義された。ここでは、人間と自然の接点である里山の歴史や生態、そして保全計画のあり方から自然体験活動との関わりなどが説明された。夜は、その日の講師の方々との懇親会が開かれた。 |
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植物を説明する平井氏 |
マキで米を炊く |
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大阪自然環境保全協会の木下氏から里山の生態についての講義をうける |
里山の生態を学ぶ |
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●二日目 8月24日は、朝のハイキングから始まった。野外活動センターの木内氏にセンター内の敷地を案内していただき、朝の清々しい空気の中で、植物や昆虫などを説明していただいた。朝食のあと9時からは、「自然体験プログラム」でガールスカウト大阪府支部の賀元氏にガールスカウトのパトロール手法によって、道しるべを読む方法やパトロール、自然の感じ方、メンバーの分かち合いなどを説明していただいた。午後は、「自然体験学習の基礎技術(2)地図とコンパスワーク」を日本ボーイスカウト大阪連盟の上道氏から指導していただいた。そこでは、地図の基本的な見方からコンパスの使い方、さらにオリエンテーリングの方法を用いグランド内にあらかじめ設置されたポイントを探し出すという実習も行われた。次に16時から「安全対策」についての講義がユースサービス大阪の今井氏によって説明された。自然活動には様々な危険があり、事前の準備や下見の重要性や、危険予知トレーニング(KYT)の実施や、子供たちの動線(動作の順序)の予測、非難場所の確認、そして救急時の処置法などを説明していただいた。また、会場の下見の方法の実習では、能勢の野外活動センターの中のいくつかのポイントを三班に分かれて下見し、お互いの班で調べた内容を発表形式で確認した。夕食後は、「プログラム企画について」において、野外活動センターの森園氏からプログラムづくりのポイントと企画の立て方を説明していただいた。 |
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ガールスカウトの賀元氏(右端) |
道しるべ |
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コンパスの使用法とコンパスワークを説明する上道氏(中央) |
みんなで方位を確認 |
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下見の結果を報告 |
野外活動センターの森園氏(教壇) |
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●三日目 25日は朝のウォーキングのあと、「自然観察実習」が大阪自然環境保全協会の大野氏によって行われた。グランドでは様々な動物の痕跡を探し、センター内のネイチャーセンターにてシカの形跡やリスの食跡、イノシシの糞を見ながら、自然観察の実習を受けた。午後からは「自然体験と環境教育」として、日本環境教育学会関西支部の本庄氏から自然体験学習における環境教育の役割について、主に氏の専門である河川の水生昆虫の調査やカモシカの生態調査を通した環境教育実践や国際交流から得られたことを、スライドを使って講義していただいた。自然体験学習と環境教育には、その目的や手段に重なる部分が多く、今後両者の相互交流による発展が望まれた。次の「プログラム企画」では、いくつかの班に分かれてプログラム企画を作るための説明を受け、参加者が実際に企画を作る作業に取りかかった。ここでは、会場を野外活動センター、時期を8月中旬、参加者十数名という設定のもとで架空のプログラムを企画し、企画案を作成し発表形式でお互いの企画を評価しあった。 |
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木内氏(右端)の指導のもと、朝のウォーキングをする |
オヤマリンドウ |
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大野氏(左端)の指導のもと動物の形跡を探す |
イノシシの糞(虫を食べている) |
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日本環境教育学会関西支部の本庄氏 |
プログラム企画を発表する |
川遊びを取り入れたプログラム |
●最終日 26日は、早朝から山階鳥類研究所の山根氏の指導のもと、全員が双眼鏡やスコープ、集音機をもってカスミ網の現場へ行き、バードウォッチングをしながら、「野鳥観察と標識調査」についての講義がおこなわれた。また、かすみ網のあるセンターの天文台付近で朝食を食べながらバードウォッチングや渡り鳥の習性に関する説明を受けた。9時からは、前日に作成した各班のプログラム企画の一部分を実際に現地で試行し、他班のメンバーが参加者になり評価をおこなった。昼食後に閉講式がおこなわれ、登録に関する手続きが説明され、3泊4日の養成講習が終了した。 これまでみてきたとおり、この養成講習では3泊4日という限られた時間の中であったが、様々な自然体験活動の理論を学び、実践を経験することができた。養成講習は内容的にみても非常に充実したものであり、また講師陣はベテランばかりで、熱心にそれぞれの専門分野について講義をしていただいた。今年度はこの初級講習(日帰りを前提としたリーダーの養成)からのスタートであるが、来年度からは中級(宿泊プログラムの企画・運営を前提としたリーダーの養成)および上級(初級・中級リーダーの指導ができるものの養成)の養成講習も検討中とのことであった。第1期生ということもあって、過去の活動実績はないが、今後この養成講習の参加者が、様々な自然体験活動のリーダーとして活躍することを期待させる講習内容であった。 |
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バードウォッチング |
カスミ網 |
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山階鳥類研究所の山根氏(右端) |
カスミ網にかかったメジロ。この後、鳥は標識をつけて放された |
自然体験活動リーダー養成講習会プログラム概要
日 時 |
活動内容 |
講 師 |
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23日 |
10:00 |
〇開講式 〇自然体験活動の理念 〇参加者を知る(グループワーク・ゲーム等) 〇自然活動体験の基礎技術 (1)野外料理 〇人と自然、社会、文化の関わり (里山の生態について) |
松尾/野外活動センター 堅本/大阪レクリエーション協会 平井/日本ボーイスカウト大阪連盟 木下/大阪自然環境保全協会 |
24日 |
7:00 |
〇自然と遊ぼうハイキング 〇自然体験プログラム 〇自然体験活動の基礎技術 (2)地図とコンパスワーク 〇安全対策 〇プログラム企画について |
木内/野外活動センター 賀元/ガールスカウト大阪府支部 上道/日本ボーイスカウト大阪連盟 今井/ユースサービス大阪 森園/野外活動センター |
25日 |
7:00 |
〇フィールド調査実習 〇自然観察実習 〇自然体験と環境教育 〇プログラム企画 〇企画案発表と評価 |
グループ活動 大野/大阪自然環境保全協会 本庄/日本環境教育学会関西支部 グループ活動 木内/野外活動センター |
26日 |
6:00 |
〇野鳥観察と標識調査 〇指導実習と評価 〇閉講式 〇登録について |
山根/山階鳥類研究所標識調査員 木内/野外活動センター 今井/大阪府青少年活動財団 |
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